噛み合わせ治療・顎関節症治療
お口の健康と全身の調和を司る大切な要素【噛み合わせ】
「噛み合わせ」と聞くと、単に「食べ物を効率よく噛むためのもの」とお考えになる方が多いかもしれません。
しかし、上下の歯が正しく噛み合うことは、私たちが想像する以上に、お口の中の健康、そして全身のバランスや心身の調和に至るまで、深く密接に関わっています。
「原因がよく分からないけれど、長年頭痛や肩こりに悩まされている」「特定の歯ばかり詰め物が取れたり、欠けたりしてしまう」
実は、このようなお悩みの背景に、ご自身では気づいていない僅かな噛み合わせのズレが隠れているケースは決して珍しくありません。
私はこれまで歯科医師として、噛み合わせの学問である「咬合学」を深く学び、実践してまいりました。
その経験から確信しているのは、見た目の美しさ(審美)と正しい機能(咬合)が、車の両輪のように調和して初めて、真に健康で長期的に安定したお口の状態が実現されるということです。
噛み合わせは、お口が発している体全体の健康状態を示す重要なサインです。
もし何か気になる症状がございましたら、それはご自身の体と向き合う大切な機会かもしれません。
私たちは、そのサインを丁寧に読み解き、根本的な原因から改善へと導くお手伝いをいたします。
噛み合わせの不調和が引き起こす様々なサイン
噛み合わせのズレは、ご自身ではなかなか気づきにくいものです。しかし体は正直です。
お口の中や全身に、様々な形でそのサインを現します。
以下のような症状に心当たりはございませんか。
お口の中に現れるサイン
- 特定の歯だけが頻繁に欠けたり、すり減ったりしている
- 治療した詰め物や被せ物が、よく外れたり壊れたりする
- 歯の根元が、くさび状にえぐれるように削れている(アブフラクション)
- 冷たいものが歯にしみる(知覚過敏)
- 歯茎が下がり、歯の根が露出してきた
- 歯周病が特定の歯の周りだけ、進行が速いように感じる
- 頬の内側や舌を、よく噛んでしまう
お口の機能に現れるサイン
- 顎の関節やその周りの筋肉(こめかみ、頬など)が痛む
- 口が以前のように大きく開かなくなった、または、まっすぐ開かない
- 口を開け閉めする時に「カクカク」「ジャリジャリ」といった音がする
- 食べ物がうまく噛み砕けない、食事に時間がかかる
全身に現れるサイン
- 病院で検査しても原因が分からない頭痛がある
- 慢性的な肩こりや首のこりに悩まされている
- めまいや耳鳴りがすることがある
- 鏡を見ると顔が左右非対称に見える、口角の高さが違う
- 朝起きた時に顎が疲れている、だるいと感じる(歯ぎしり、食いしばり)
これらのサインは、噛み合わせの不調和によって、お口周りの筋肉や顎の関節に過剰な負担がかかっていることを示している可能性があります。
顎関節症とは – 放置してはいけない顎のSOS
上記のサインの中でも、特に代表的なものが「顎関節症」です。
顎関節症は決して珍しい病気ではなく、近年ストレス社会などを背景に、多くの方が悩まされています。
顎関節症の主な症状
顎関節症には、主に以下の三つの代表的な症状があります。
| 症状 | 詳細 |
|---|---|
| 顎の痛み(関節痛・筋肉痛) | 口を開け閉めする時や、食事で物を噛む時に、耳の前にある顎の関節や、こめかみ・頬の筋肉に痛みを感じます。 |
| 口が開きにくい(開口障害) | 口が思うように大きく開かなくなります。 正常な場合は、ご自身の指を縦にして3本程度入りますが、2本以下しか入らない場合は開口障害の可能性があります。また、口を開ける時に顎が左右に蛇行することもあります。 |
| 顎を動かすと音がする(関節雑音) | 口を開け閉めする際に「カクッ」というクリック音や、「ジャリジャリ」「ミシミシ」といった、砂を擦るような音がすることがあります。 |
これらの症状は、一つだけが現れることもあれば、複数が組み合わさって現れることもあります。
なぜ顎関節症になるのか
顎関節症の原因は一つに特定できることは稀で、いくつかの要因が積み重なって、その人の許容量を超えた時に発症する「多因子疾患」であると考えられています。
- 噛み合わせの異常
- 歯並びの乱れや、高さの合わない詰め物・被せ物などによって、噛み合わせのバランスが崩れ、顎の関節が不自然な位置にずれてしまう。
- ストレス
- 精神的な緊張やストレスは、無意識のうちに顔周りの筋肉をこわばらせ、睡眠中や日中の食いしばりを引き起こす大きな原因となります。
- 癖(パラファンクション)
- 歯ぎしりや食いしばりの他に、日中に上下の歯を無意識に接触させる癖(TCH:Tooth Contacting Habit)、頬杖、うつぶせ寝、猫背などの姿勢、楽器の演奏やスポーツなど、日常生活の中に潜む様々な癖や習慣が顎に負担をかけています。
こばやし歯科の噛み合わせ・顎関節症治療
当院では、単に痛みを取るだけの対症療法ではなく、なぜその症状が起きているのか、その根本的な原因を様々な角度から精密に探り出すことから治療を始めます。
すべての基本となる精密な診断
問診と視診・触診
まず患者様がどのような症状で、いつからお困りなのか、その背景にある生活習慣やストレスの状況などを詳しくお伺いします。
そして実際にお口を開け閉めしていただき、顎の動き方や痛みの場所、筋肉の緊張度合いなどを丁寧に診察いたします。
咬合診断
「咬合紙」という色の付いた薄い紙を噛んでいただき、歯がどこで、どのくらいの強さで接触しているのかを印記して、力のバランスを分析します。
また「咬合分析器(アーティキュレーター)」という装置で、患者様の顎の動きを精密に再現し、噛み合わせの問題点を立体的に検証することもあります。
画像診断(CTスキャン)
顎関節症の症状が、筋肉だけでなく関節の骨そのものに原因がある可能性も考えられます。
当院では歯科用CTを用いて、顎の関節の骨が変形していないか、すり減っていないかなどを三次元的に詳細に評価し、より正確な診断に役立てます。
筋肉の活動を客観的に評価する
顎の痛みや不調の多くは、噛む時に使う筋肉(咬筋・側頭筋など)の過剰な緊張が原因です。
当院では「ホルター筋電計」という装置を用いて、これらの筋肉がリラックスしている時と力を入れている時に、どの程度活動しているのかを客観的な数値データとして測定することが可能です。
これにより症状の原因が筋肉に由来するものなのかを、より正確に判断し、治療の効果を判定する上での重要な指標とします。
症状を和らげ、原因にアプローチする治療法
精密な診断の結果をもとに、患者様一人ひとりの状態に合わせた最適な治療計画を立案します。
スプリント療法(マウスピース治療)
顎関節症治療の基本となる最も一般的な治療法です。
患者様の歯型に合わせて作製した透明なマウスピース(オクルーザルスプリント)を、主に就寝中に装着していただきます。
このスプリントには以下のような働きがあります。
- 歯ぎしりや食いしばりの強い力から、歯と顎の関節を保護する。
- 筋肉の異常な緊張を和らげ、顎をリラックスした状態に導く。
- 顎の関節を、本来あるべき安静で安定した位置へと誘導する。
スプリントは、ただ作って装着すれば良いというものではありません。
装着後のミリ単位での精密な調整が、治療の成否を大きく左右します。
当院では院長が持つ咬合学の深い知識に基づき、責任を持って調整を行います。
物理療法(筋肉の緊張緩和)
長年の食いしばりなどで、慢性的に凝り固まってしまった筋肉に対して、当院では筋電計に付随する低周波治療器(TENS)を用いた物理療法も行います。
ごく微弱で心地よい電気刺激を筋肉に与えることで、血流を改善し、筋肉を強制的にリラックスさせ、痛みやこわばりを和らげます。
生活習慣の改善指導
顎関節症の根本的な改善には、患者様ご自身の生活習慣の見直しが不可欠です。
特に日中に無意識に上下の歯を接触させてしまう癖(TCH)は、顎への負担が非常に大きいことが分かっています。
「歯を離す」「力を抜く」と書いたメモを目につく場所に貼っていただくなど、この癖に気づき、意識的にやめるためのトレーニングをご指導します。その他、頬杖や姿勢など原因となっている可能性のある癖を一緒に見つけ出し、改善をサポートします。
咬合調整・矯正治療
スプリント療法などで症状が安定した後、その原因が明らかに噛み合わせのズレにあると判断された場合には、より根本的な治療へと進みます。
特定の歯が強く当たりすぎている部分を、ほんの僅かに削って調整したり、不適合な詰め物や被せ物をやり直したりします。
歯並び全体に問題がある場合は、矯正治療によって歯並びそのものを整え、顎にとって理想的で長期的に安定した噛み合わせを再構築することを目指します。
ボトックス治療
重度の歯ぎしりや食いしばりがあり、スプリント療法だけでは筋肉の緊張を十分にコントロールできない場合に、選択肢となる治療法です。
筋肉の働きを和らげる作用のあるボトックスを咬筋に注射することで、無意識下での過剰な力を弱め、歯や顎への負担を軽減させます。


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